40年ぶりの蝶ヶ岳

先月初め、ほぼ40年ぶりに蝶ヶ岳に登った。

ボーイスカウト横浜第107団ベンチャー隊の「高度な野外活動」プロジェクトのインストラクタとしての登山だ。


40年前…、私は高校生だったが、この頃から大学卒業まで、毎年夏になると北アルプス穂高の涸沢を中心に山に入り浸っていた。

その年は梅雨明けが遅れ、涸沢でずっと雨に降られて体も装備もずぶ濡れになっていた。
仲間達と相談の結果、帰路は横尾から蝶ヶ岳を越えて安曇野に抜けることになった。

蝶ヶ岳は槍穂の展望台として人気の山であるが、この時は梅雨明け前の豪雨で、展望は全くなかった。そればかりか、安曇野への下山路も濁流で消えており、無理してトラバースした山腹から足を滑らし、あわや濁流に転落しかかるというおまけまでついてしまい、いまだに忘れることのできない山行であった。


今年ボーイスカウト横浜第107団の夏季キャンプは、友団横浜第98団とを松本市波田で実施した。
その活動の一環で、冒頭の「高度な野外活動」として、常念岳蝶ヶ岳上高地の一泊野営の縦走を行った訳である。

40年前果たせなかった槍穂の大パノラマを自分でも見たかったのと、登山初挑戦のベンチャースカウト(高校2年生)に、挑戦した者にしか分からない感動を味わって欲しいという思いで、老体に鞭打ってインストラクタを引き受けた。

未明に波田を発ち、一ノ沢登山口から常念岳まで標高差約1400mを一気に登りつめる。
朝から雲は厚かったが、常念乗越につくと本格的な雨になってしまった。
冷たい雨の中、常念から蝶槍までのアップダウンが想像以上にきつく、体力気力の衰えを悟らされるが、蝶ヶ岳三角点あたりから雨は止み、蝶ヶ岳ヒュッテ横幕営地では40年前とは違って、濡れずにテントを張ることができたのは幸いであった。

そして翌朝!
ついに40年前果たせなかった槍穂の大パノラマを堪能することができた。

北は大天井からもっと先、南は乗鞍からもっと先、という具合に遮るものはない。

素晴らしい景観の中、徳沢まで長い尾根を下り、観光客で賑わう上高地に無事到着した。

40年経っても槍穂の勇姿や、上高地から見上げる岳沢の美しさは変わらず、懐かしさとともに再びここに来れたという喜びを噛みしめることができた。


それにしても噂には聞いていたが、中高年が多いことと、軽快ないでたちの若い男女が多いことには驚かされた。

そういう変化の反映なのか、山頂の山小屋では大画面のテレビが映っており、ビールの自動販売機もありで、山と人との関わり方が変わってきたことを感じさせられた。
一方で、自分の力でアップダウンの苦しさを乗り越え、目まぐるしく変わる自然の中で許される、一瞬の眺望や花の可憐さに癒されるといった要素は、今も昔も変わらないものであることも確信できる。
恐らくここが登山の普遍的な価値のひとつなのではなかろうか。

幸い、一緒に登った高校2年生も、初めてということもあり相当苦しかったようだが、それを乗り越えたことは大変大きな自信なったようだ。
これからも登山を含めいろいろなチャレンジをしてくれることを願っている。